恵まれた四季折々の風景、救うに値する残された自然、釣りを通じてそれらに触れ、かみしめてゆきたいと思います。
例えば太平洋の夏の華、シイラ。殺して卸せばせいぜい500円程でしょうか。しかしこの魚の本当の価値は、その力、その跳躍、その闘志、その眩いばかりの輝きにこそあります。
青い海に泳ぎ去ったその姿を思い返す度によみがえる感動は、金で買えない価値あるものです。
豊かな自然や生態系は、なにも北や南の果てだけにあるものではありません。人間の生活圏のすぐ脇で、意外なほど小さな流れを頼りに、魚たちは海へ下り、山へ登り、命を紡いでいます。知ることが感動を呼び、触れることが慈しむ心を育てます。
文明の発展の陰で、多くの生き物達が姿を消していきました。しかし中には、人間の啓発と努力によって、絶滅の危機から回復を見せつつある生き物もいます。
小さな島国、日本。世界の広さを知るにつけ、目が外にばかり向く時期もあるものです。一方、齢を重ねるほどに、四季に恵まれたこの美しい土地を、もっとよく知り、深く味わいたいという気持ちが募ってきたのも正直なところ。フライフィッシングは日本の原風景探しの探訪に、素晴らしい機会を与えてくれます。
南北に3000kmの広がりを持つ国土。サケが昇る川を北に、サンゴの繁る熱帯の海を南に持てる国は、すくなくとも北半球には他に存在しません。この幸運を僕らは感謝して、後世に守っていく責任があります。
海に囲まれが山がちな国土、雨の多い日本には豊かな川が多くあります。乱獲と開発によって脅かされながらも、美しい野生魚が泳ぐ渓が存在することは、釣り人のみならず全ての日本人にとっての財産です。