そして本題の、釣り。これだけ広大な国土を持つロシアなら、魅力的なフィ−ルドはあまたあるはず。

日本のメディアで取り上げられるのはカムチャッカ方面の釣りが主で、ヨ−ロッパロシア、または中央シベリアの様子を知る機会はあまりありません。無知こそが、夢の出発点。情報過多の現代において、これほど恵まれた夢舞台もないでしょう。
2015年末から始まったロシア生活、与えられた時間はひとまず三年。お勤めのほうはともかくとして、本業の水商売、精一杯奮戦してみるつもりです。
国土の大半が寒冷地であるこの国。冬の寒さは想像どおり、或はそれ以上に厳しいものがあります。極寒の晴れ間に舞うダイヤモンドダストも、一冬越すころにはもう珍しくもありません。

それだけに、そこで命を繋いできた人々の暮らしぶりを知り、厳しい自然との関わりに触れることには、噛みしめるほどに深い味わいがあるようにも思えます、暖かい部屋で思い返すぶんには。
国民の大半、80%を占めるのはスラブ系の、いわゆるロシア人である一方、この国には実に180もの異なる民族が存在しているのだそうです。公用語とされるだけでも26言語、それ以外に100以上の明確な差異をもつ言葉が話されると聞くと、どうやって国家としてのアイデンティティを維持しているのか、余計なお世話でしょうが心配にすらなってしまいます。

北部ツンドラの極地圏にはアイヌやエスキモ−のような狩猟民が、南部中央アジアに接する地域にはイスラムを信仰する草原の遊牧民が暮らします。近代化が進むヨ−ロッパロシアだけでなく、それらの広がりを知ることで、この国の奥深い、多様な魅力を知ることができます。
アメリカと世界の覇権を争ったソビエト時代の勢いは衰えたとはいえ、ロシアは多くの周辺国にいまだ強い経済的繋がりと、政治的影響力を持っています。

ロシアの首都、モスクワに暮らすことは、かつて『鉄のカ−テン』に閉ざされ、日本人には触れる機会乏しかったそれらの国々を旅する絶好の機会を提供してくれます。
狭い海ひとつ挟んだご近所さんでありながら、どうもよくわからない国、ロシア。僕自身の事前知識も、せいぜいタマネギ屋根の教会程度。政治面ではかねてより不穏な話しか聞いたことがありません。

それだけに、旅行ならばともかく、いざそこに暮らすとなると不安大きかったのが正直なところです。が、言い換えればすべてが新しい発見のフィ−ルド。40も過ぎたオッサンがビクビクしながら街を歩くなど、そうそうできる経験ではありません。ここはひとつ前向きに、不思議の国ロシアへ、いざ出発!
もうひとつ判っていたことを挙げれば、その大きさ。ヨ−ロッパからアジアを繋ぐ東西の広がりには11のタイムゾ−ンが設けられ、1,700万平方キロという国土面積は二位カナダの2倍近い、圧倒的な世界一。日本の何十倍かなんて比較はもはや意味を成しません。

日本と欧州を行き来する際、飛行機の窓から見える圧倒的な広がり。雪を抱いた峰々、悠々と流れる大河、そこには確かに現代人の未知への渇望を刺激する何かがあります。