そんなこんなで目を背けていた渓流釣り、しかし!『パラダイス発見、行きましょう!』と声を掛けて下さったのは大阪から単身赴任で広島に来られて三年目のIさん。もともと健脚の登山家、広島の渓の経験がないぶん先入観に邪魔されず、我々地元民が遠い、危ない、釣れねえと敬遠するその先へ分け入り、発見されたというのです、パラダイスを。
案内されてみると、おお。。。そこは僕らが遥か昔に釣った川、覚えのある滝ではないですか!(前回、2006年の様子、ポインタ−を当ててご覧下さい)
『この時期、本流筋は釣れんのでは?』 I師、反応のない本流(と言っても一般カテゴリでは源流ですが)を捨て、さらに狭い、峻険な沢に分け入ることを提案。
いや、正直怯みましたよ僕は。見上げる角度がほとんど真上ですもん!が、折角あの函を抜けたのに魚の顔を見ずに帰るわけにもゆかぬ!覚悟を決めて、さあ滝登り。
と、いうことでファイト一発、この沢を天まで登り、三匹のゴギを釣ることができました。なかでも師がキャッチしたこの一匹は尺には届かなかったものの良い面構え。命の危険を冒してまで攻めるべき渓ではありませんが、とにかく、やり切った。
滝の上は、まさに別世界。下流側では僕と奥さん、せいぜい5匹も釣れれば満足した記憶。が、滝の上の魚密度は段違い!10倍、いや、100倍と言わねばならんでしょう!ポイントというポイントで反応があり、一休みもさせてくれません。
凄かったのは、その先。僕らが前回行き当たり、これはムリと判断し引き返した滝 (人との対比でご覧頂くと、規模感ご理解頂けるかと)、I師はそこで諦めるのではなく、大きく迂回し滝上へ抜けるル−トを発見するに至った、その探求心やアッパレ!
さて、この師の突破力を見込みご同行を願ったのは、20年以上前、僕が奥さんとフライを始めた当時、何度も通いこんだ美しい谷の奥、急崖が両岸を成す深い淵。その先に、パラダイスはあるのか!?
盛夏八月、水量も落ち着いたこの状況ならば、せいぜい20m程の淵、泳ぎ越えることはできるはず。ことに、神をも恐れぬ源流師、Iさんとのコンビなら!
なんとか越えた。これを越える覚悟をもった釣り人は、そう多くないはず。さあ来い、尺ゴギ!
しかし魚影は、思いのほか少ない。極小の魚が時折フライをつつきに来るも、フックアップには至らず。渓相はダイナミック、随所に大場所も展開し、雰囲気は十二分なのですが、どうしたことか?
流れに逆らって泳ぐ必要のある行きとは異なり、帰りは楽々。荷物を詰めた防水バッグを浮き輪に、プカプカ流されるだけで下界に帰着。
『忘れられた川』、『滝の上のパラダイス』、そして『25年越しの函越え』 楽しい記憶と大きな前進を得ることのできた2022年の夏でした。ハイ、これらすべて、I師のおかげでございます_(_
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- End
大岩の連続で荒々しい下流部に比べ、勾配が緩くむしろ穏やか、チャラ瀬と小さなプ−ルが連続し、歩きやすく釣りやすい。同じ川とは思えない渓相の変わりようにも、ビックリ。
前回の訪問でも、釣れるには釣れたんです。が、車を停めてから入渓点までワシワシ歩くこと20分、結構遠い。その割に合うほど釣れるわけではなく、出撃リストから消されていた川。おそらく僕らと同じ理由で釣り人の姿も減っていったのでしょう、それから16年、渓魚達は復活を遂げ、ひっそりと暮らしていたのです。『忘れられた川』が、そこに。
魚密度が高すぎることもあってか、尺を越える個体は釣れませんでしたが、ゴギとしては良型、25p級はまじり、ルア−の師もフライの僕も、それぞれ20匹を越えるキャッチに大満足。
フライに喰ってこないがルア−には反応する魚は(アマゴには少ないがゴギには)かなり多く、その違いを目の当たりにするのも学びの多い経験でした。
苔むした岩を峻烈な流れが洗う、イワナの楽園。滝の上にこんな世界が広がっていたとは!広島にこんな渓が残されていたとは!そしてそれを、なにわのルア−マンにご案内頂いてしまうとは、地元民一生の不覚!
ともあれ、僕の渓流熱を再燃させるに足る、衝撃的な七月の一日でした。
手よりも大きい立派なカエル。標高高い土地の短い夏、どれだけの年数を生き抜いてこれだけの大きさに育つのでしょうか。
I師の突破力、それを目の当たりにした僕が思い当たったのは、過去に何度か釣りあがったことのある川、しかし落差47mの大滝に阻まれ、それを越えることなど思いもよらず諦めていた、その先。
師に言及したところ翌週末、『行ってきました、高巻きル−ト発見しました、上はパラダイスでした』とのご報告。マジか!
地元民のプライドなどかなぐりすて、早速ご案内をお願いしました7月末。ほほう、こう回りこむのか、そしてここをヘツルのか、いやはや、よう見つけましたなこんなル−ト。そして、(写真にポインタ−を)
なかなかのヤバイやつですな!
もう一つ驚かされたのが、Iさんのベイトフィネス妙技。大きな淵ならともかく、小さなポケットを打ってゆく山岳渓流の釣りではフライが勝るものと思っていた僕でしたが、絶妙のコントロ−ルで打つんですわ、流れのヨレを、岩のスキマを、倒木の邪魔する反転流を、、、
スゲエ、スゲエぞIさん、いえ、師と呼ばせてくださいI師!
『さ、さ、釣ってください!』と譲られて、投げてみると果たして、、、
パシャッ! ・・・早速釣れたがな。
加えて、それ以上に深刻な問題は、釣れねえ!というか、魚いねえ!SDGsが叫ばれるこのご時勢でも、魚を持ち帰る人はいまだ多く、放流された魚は解禁直後、野生を取り戻す前に釣り切られてしまいます。メイフライやカティスが飛ぶ美しい渓に、ライズのひとつも見られないのは寂しいものです。
渓流の釣り
フライを始めた25年前は毎週のように通いつめた芸北の渓、しかしソルトフライを始めた10年前を境に渓流詣での頻度は下がり、ここ数年はすっかりご無沙汰しておりました。
自宅から車で一時間半、不満を言うほどの距離ではありませんが、市内、徒歩圏内でも楽しめるソルトの気軽さに比べると、・・・やはり遠い!
'22 Journal