アマゾンと同じく、この魚は水のあるところ全てに存在します。いや、この広い川を埋め尽くすほどに大量のパロメタがいるはずはないのですが、血の匂いがする物を落とせば次の瞬間にはそこに黒い影が。どう言えばいいのでしょう、それは、『突進してくる』ふうでなく、既にそこに『居る』様子なのです。魔法としか表現しようがありません。
ドラドをリリ−スする際には極力手を水につけず速やかに、とも注意されました。実際、鉤がかりしてファイトするドラドの後ろを二、三匹のパロメタが遠巻きに窺っている場面はよくありましたし、ドラドの血に魅かれたパロメタに襲われ指を失くしたガイドもいるそう。そんな危険な魚が日本の野池に泳いでいたら、たちまちPTAは紛糾し、町内会は自警団を組織し、国会では特別予算が承認され最後の一匹まで殲滅されると思うのですが、南米の人は意に介さず、平気で子供を泳がせているから不思議です。
Palometa Brava、ちょっとカワイイ名前の響きではありますが、白く輝く歯がステキです。容姿はアマゾンのピラニアそっくり。異名同種の魚かと思ったのですがガイドによると別の魚とのこと。そう言われてみると僕らの知るブラックピラニアに比べ、このパロメタはフライへの関心が高いように感じられました。アマゾンでの釣りはトップが中心であったため、シンキングラインで底を探る今回の釣りとは条件が異なりますが、それを考慮しても今回はこの凶悪な牙とやたら懇意にお付き合いをさせて頂きました。
サイズは30〜40cm。厚みもあるため、重さにして3ポンドに迫る良型揃い。実際ヒット時の衝撃はドラドのそれに勝るとも劣らないほど強烈。一方跳躍はできず、ドラドほどには華もスタミナもないのは仕方ありません。
一匹持ち帰ってフライにしてもらいました。すると、これがどうしたことか、絶品なのです!臭みはなく、かといって淡白すぎず、上品な魚のうまみがプリプリの身に詰まっているのです。大柄なメバルという感じでしょうか。アマゾンで食べた超美味なナマズ、スルビンには一歩及びませんが、トクナレとは互角の味わい。もてはやされるピラルク−よりも遥かに脂がのって思われます。これにたっぷりレモンを絞り、軽く塩をふってやれば、それだけで僕は幸せです。
この感動を雄弁に力説したのですが、宿の皆さんは軽くほほえむだけで特に興味を持つでもなく、淡々とステ−キをおかわりしているから不思議なものです。
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