ピラーニャに襲われたトゥクナレ。ラインが切れ、ルアーを口に掛けたまま逃がしてしまったのですが、どうやらうまく泳げずもがいていた様子。間もなくピラーニャに捕捉され水面が爆発を始めました。急ぎ舟を漕ぎ寄せるまでの数秒間にトゥクナレの下半身は骨ごと切断されていました・・・。

申し訳ないことをしてしまったこのトゥクナレは塩焼きにして美味しく頂きました。なお、ピラーニャの肉も大変よく締まり、美味であったことを付け加えておきます。


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一方意外にも、ピラーニャはアマゾンの食物連鎖の中で、むしろ底辺を支える存在とのこと。親が子を守る習性を持たないこと。そして比較的泳ぎが遅いこと。これらのためにトゥクナレのような攻撃的な魚には常食として狩られる、意外に気の毒な存在でもあるようです。

また彼らは弱った魚、ケガをした魚を速やかに処理することによって、ある意味アマゾンの生物相を健康に保つ役目を果たしているのかもしれません。広大なアマゾンに風邪をひいた魚は一匹も存在しないことを僕は確信しています。なぜならクシャミひとつしたとたんに、背後にはピラーニャの牙が迫っているからです。アマゾンには失業保険や厚生年金といった社会保障制度は一切ありません。あるのは喰うか喰われるか、弱肉強食の掟だけです。
この魚を釣るのは簡単。まずエサ釣りなら、角切りの魚肉を掛け、水底に降ろすだけ。僕らが体験した限り、10秒以内に彼らは来ます。カミソリが肉片を切断する微妙な感触のあと、重みがかかったような感触がくればそれが本アタリ。思いきりアワセてやります。

ルアーの場合はシンキングミノー。‘血の色’である赤が一番との話でした。ピラーニャは泳ぎが遅いため、トップウォーターを早引きする方法では稀にしかバイトしてきません。軽いジャークを加えながらミノ−をゆらゆら引いてやると、例の黒い不吉な影が二匹、三匹と浮かび上がり、ヒラを打ちながら噛み付いてきます。


フライの場合にもやはり少し沈めてやることが重要です。ビジュアル系のフライも一銭交えるとスポーツ刈りになってしまうのは仕方ありませんが。
ところでこの魚にも実は多くの種類があります。まずは熱帯魚店などでもよく見かけるPiranha Vermella(赤)。これはアマゾン川本流に最も多いタイプで、遊覧船でのアマゾン川クルーズで手軽に釣り体験をさせてもらえます。体長は20cm程ですが、大群で行動し、一旦獲物が見つかれば牛だろうが人だろうが瞬く間に平らげてしまう、最も危険な種だそうです。もう一回り大きい種類にはPiranha Amarela(黄)、Blanca(白)などがいるそうですが、今回はこれらの生きた実物をみることはできませんでした。
僕らが今回狙ったのはピラーニャの中の最大種、Preta(黒)。名前の通り不吉な黒光りを放つその体は体高、厚みともに他のピラーニャを圧倒し、威圧感すら感じさせます。

最大では体長50cm、3kgにもなるといわれるこの黒ピラーニャ、今回僕らに釣れたのは40cm、15kg程のものばかりでしたが、その引き込みは強烈!侮れません。
アマゾンの脅威を代表する魚、ピラーニャ。往々にしてこの種の生物には過度の誇張がつきまとうものです。が、ことピラーニャに関してはその恐るべき逸話の多くが真実であろうと思わざるを得ません。

第一の特徴は、その鋭い歯。それはカミソリの切れ味と手斧の破壊力をあわせもった、恐るべき切断道具です。ワイヤーリ−ダ−のみならず、ステンレスフックを噛み切ることすらありました。

ある意味その歯以上に恐ろしいのは彼らの神がかり的な嗅覚。フライに魚の血の匂いが僅かでも着こうものならば、次のキャストでは確実に、それまで気配すら見せなかったピラーニャが、‘確実に’襲いかかってきます。

浅瀬で昼飯の残りを洗うと、そこには手品のようにピラニアが沸きあがります。鉤掛かりして跳ね上がったトゥクナレが着水するところには、沢山の黒い影がワラワラと殺到します。まさに神出鬼没。アマゾンに水あるところ、血の匂いのあるところ、そこには死神の影が黒光りをさせて蠢いています。
名著‘オーパ’を始め様々な文献で紹介されている通り、ピラーニャ釣りはまず水面をバシャバシャと掻き回し、動物が溺れているかのような音をたて、彼らを寄せることから始めます。船頭さんが手でフナベリの水をかきまぜるのを見て、僕も涼みがてらバシャバシャとやっていたのですが、後でロッジのオーナーに聞いたところでは、ピラーニャの中には気の早い奴もおり、結果この村の漁師には指が欠けている人が多いそうです。一生ギターを弾けない体になるのがイヤなら、素手でバシャバシャをするのはやめておいた方が賢明であるようです。(そうゆう大事な話は先に言うてよね・・・。)

彼らはやや中層以下の深みを好むといいますが、ヒザほどの水深の浅瀬にまで弁当の残飯を漁りに来たりもしましたから、どこであれ油断は禁物です。水あるところにピラーニャはおり、‘その瞬間’を狙って息をひそめています。そんなこと知らない僕、誤ってボートからペンチを落とした際、水浴びを兼ねてパンツ一丁で潜って拾ってきました。が、後でピラーニャのことを学ぶにつけ、ちょっと背筋が寒くなってしまいました。(そやから先に言うてください〜!)