一方でハム奥様の苦悩は続く・・・
スペイでやるからには右も左もできないと、右岸左岸、風向きの左右に対応できません。今回の滞在中は決まって、昼頃からは海から吹き上げる風が強まり、体の上流側でアンカ−を打たないと投げられないのです。
シングルハンドを左手で投げることに比べればダブルハンドの左は遥かに簡単ですが、そうはいっても一日二日の練習ではなかなか。そこにきて背後の河原ではチビが騒ぐ、(これまた素人の)亭主がああだこうだと要らんアドバイスする、もう余計に大混乱!
この日我々のKitshaでの唯一度だけのアタリ。それを見事に捉えた殊勲の一本。白銀のフレッシュな体からは鱗がこぼれおちそうです。こりゃ食べても最高に旨いでしょう!(ライセンスはC&R限定ですので、Keepはできませんが)
遡上のピ−クはとうに過ぎたとはいえ、全くのゼロでもない状況。そこで如何に集中を維持できるかが勝負の分かれ目。ああほんと、イヤな釣りです!
少し下流の瀬尻でサ-モンの跳ねがあった、その数分後の出来事。意識をさらに集中し、丁寧に流し込んだフライが勝利を呼び込んだのでしょう。かっこよすぎっす大将!
翌朝、約束の時間に現れた運転手はおそらくヒマな村人。年代もののLADA、車体小さくてダブルハンドを全部バラして積み込むのがめんどくせえ!
ただ、いざ走り出してみると、・・・おお??おおう、なかなかやるじゃないのLADA 4x4!かなりの悪路、砂の深い海岸沿いも、スイスイ苦にせず走ってゆきます。そういえばSerbiaの渓流に行った時にもお世話になりましたLADA。ロシア版ジムニ-と言いたいッ!
勝者の余裕、か〜 この!憎たらしいやつめ〜!!
一方、ここぞと狙ったポイントを黙々と、根気よくカバ−し続けていたB司令。半日が過ぎ、そろそろ手詰まり感も漂い始めた昼下がり、ついにその時がやってきました。
ヒットォオオ---!
川幅は50m前後。流量的にもVarzugaに比べると遥かに少ないものです。ただ、深い湖を水源とするこのKitsaはVarzugaに比べ水温が低く、遡上のタイミングは例年若干遅めとの話。これは期待の持てる情報です。
ただ、どうもこの流域は単調な直線が続き、サ−モンの足を止めてくれそうなポイントが見当たりません。漁師のデニスは、『その辺でやれや』と言ってくれますが、ルア−ならまだしも、フライに適した地形でないのは明らか。しばらくボ−トを進めてもらい、なんとか期待のもてるポイントを発見、一安心。
砂埃を盛大に巻き上げながら走ること小一時間、降り立った漁村、Kuzomeni村の寂れ具合といったらこの通り。しかしこんな地の果てにも人の暮らしがあり、築き、朽ちる営みが繰り返されてきたのかと思うと、いとおしくも思えてきます。
さてここで運転手殿は終日待機。僕らは漁師さん宅で漁券を買い、対岸に位置するKitsa川へ渡してもらうという段取りです。
Varzugaの流程は約200kmにも及びます。僕らが釣りをしたのは河口から20kmほどの下流域。右図、赤丸で囲った部分。早い解氷と温度上昇でサ−モンは既に上流へ移動してしまった状況は既述の通り。(実際上流ではRoxtonsの別ロッジが鋭意営業しており、お金さえあればヘリでひとっとび。サ−モンの遡上を追って釣りあがることも可能です。)しかし哀しいかな、先立つもののない我々庶民は同じ景色のなか連日の忍耐・・・
宿の親父を問い詰めると、Varzugaの河口域、青丸部分で合流する小規模な川、Kitsaなら、そこまでの足と漁券の手配は可能とのこと(はよ言え!)。過剰な期待はもてませんが、ここは気分転換、Kitsaへのデイトリップを企画してみました。
スペイキャスティングの猛特訓に嫌気もさしてきた奥様、あちこち虫に噛まれながらも耐えてくれたチビ、すまぬ、オレが釣り変態なばっかりに・・・
宿に戻り、しばし猫エネルギ−注入。
Varzuga in June '16 - 3
旅も中盤を過ぎたこのころには、B司令のキャストは美しい弾丸ル−プ。比較的細いこの川、対岸ギリギリの流れの筋まで、いやらしく打ち込んでカバ−していきます。こうなってくると、投げるだけでも楽しいんですよね、スペイって。
Varzugaが白海に流れ込む場所。夏の陽射しに照らされ、世界の広がりが今ここに。
漁師のデニスが船を曳いてやってきました。目的地はすぐそこ対岸ながら、新たなドラマへの期待、楽しい気分で出発。