釣りにいくたび僕のシゴキの犠牲となる奥様、しかし今回ほどストレスを感じたことも無かったでしょう。慣れないスペイキャストゆえ、チャンスをものにできていないという自分への苛立ち。釣らせてあげたいという皆の思い、それが判るがゆえの重圧。

しかし今は全て忘れ、その張りつめたラインの先で躍動する、一本の魚と対峙する時!恐れずに止め、慎重にいなし、よくぞ、捕った!
ほんの一週間でしたが、いろんなことがありました。長すぎる沈黙、選択と迷い、頭上すぐそこを爆音立てて飛び去る高級ロッジのヘリ。『他所は釣れてんのかなあ』なんて恨めしく仰ぐ広い空・・ ん?・・また髪の中まで潜りこんできやがってこのブヨ!うわ、バッチリ血吸われたがな、ああもう!なんてやってる時に限って訪れる突然の衝撃!

ほんっと、好きになれませんこんな釣り。二度と来んぞというほど嫌いにもなれんのが辛いところですが。
キャンプに戻り、B司令に感謝の戦勝報告。素晴らしい釣り旅をした、そんな満足と笑顔に溢れる楽しい午後になりました。

最後に僕も二時間自分の釣りを。実はドライにヒットした貴重な魚をバラすという事件があったのですが、まあそれは大した問題でもないでしょう。

ボ−トを出す浜には先客の姿が。四、五十頭の牛たちがなにやらモジモジしています。リ−ダ−とおぼしき一頭が意を決したて水に入ると、我も我もとザブザブ続き、対岸目指して泳いでいきます。それはまるでセレンゲティのヌ−、野生の王国世代には響く絵です?
約束の時間、川下遥かから船外機の音を響かせて、迎えの舟がやってきました。一抹の名残り惜しさを、冷えたビ−ルへの期待でごまかし、川を下りました。


以上Varzuga第一回釣行、動画でも記録しました。釣り部分僅かですが、ご興味あれば。
隣で平静を装う僕のほうが卒倒寸前でした。
ここぞという時に肝が座ってるのは女?

Varzugaとひとつになった、価値ある瞬間。
出会いに深く感謝し、背中を見送りました。
旅は完結したよ。おめでとう。
さらには今回、B司令にはうちの猛獣の遊び相手役を何度も引き受けて頂き、どれだけ助けて頂いたか分かりません。この午後も、『自分はもう満足したから、奥さん上流ポイントに連れてってあげて』とのお気遣い。

お互い少なからぬ金と有休工面して釣りに来てるのに、そんなご厚意甘えられませんよ〜とお断りするのが常識人。しかし同じ雨に打たれ、風に吹かれ、蚊とブヨになぶられて共に時間を過ごしたチ−ムメイト、そんな水くさいもんじゃないんです。真心の優しさには心からの感謝を胸に、全力で応える!いくぞ、妻よ、B司令が猛獣の囮となってくれている今こそ、出撃の時!
今日も同じ中洲が僕らの仕事場。あちこち移動できる高級ロッジとは違い、安宿ベ−スのフィ−ルドは一択。まあ、川を昇る鮭の数はどこでも一緒、しっかり地形を見極めさえすれば、チャンスは等しく巡ってくるはず。

子守と慣れないスペイキャスト、まだ一本に辿りつけていない奥様。なんとかこの最終日、ドラマを起こしてほしい・・・ まずはキャンプ前でキャス練。コツを掴んだか、ル−プには勢いが増してきました!
Kitsaへのデイトリップから戻り、いよいよ最終日。再びVarzugaの本流としっかり向き合って、旅の締めくくりと行きたいところ。

この日も爽やかなお出かけ日和り。気温が上がって蚊やブヨが飛ぶ、水温上がって鮭の活性が下がる、そんな心配との板挟みではありますが。
翌朝。お世話になった宿の皆さんに別れのご挨拶を済ませ、Varzugaを離れました。

今度は来た道を逆向きに、Murmanskへ向けて8時間のドライブ。同じ道の景色が、少し違って見えました。



- End





Fishy Trips
Varzuga in June '16 - 4
中洲から上流へ300mほど遡行が必要なこのプ−ル。初日の僕の一本に始まり、この朝のB司令の二本まで、幾つものドラマを生み出してくれた最高ポイントなのですが、途中の渡渉が厳しく奥さん一人では行かせられない。僕がチビ肩車で同行すれば可能だが、釣りの間降ろしておける陸もない。そのため諦めていたこのポイント。ここを釣らせてやれるのは一重にB司令のサポ−トゆえ。

キャストも安定してきた奥様、ここが正念場。サ−モン、さあ来い! ・・・頼む、来てくれ、、、 ねえ、おねがい、キテ・・・

『来たっ!』
朝の部、上流のポイントをカバ−したB司令、満足の表情で昼飯に帰ってきました。なんと、さらに二本を追加!デジカメ画像は鼻が曲がりかけた迫力のオス、72cm。今回釣行の最大寸です!

『やりきった・・・!』 アイスランドやノルウェ−など、サ−モン経験豊富なB司令とはいえ、ロシアの川は初めて。厳しいコンディション、だからこそあらゆる智恵を尽くして魚を捉える過程には、大きな価値がある。そう言って頂けると、お誘いした僕としても救われます。

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